2011/10/11

コラム: ワーキングミュージシャンという考え方

Editor: Shige Okusawa (Acousphere)

Acousphere 奥沢です!
今回の記事では過去に僕が書いたコラムの中から「ワーキング・ミュージシャン」という考え方を紹介したいと思います。

2011年の現在、日々ブログメディアから入ってくるニュースに目を通す限り日本の音楽文化は衰退の一途をたどっているように僕は感じます。
これまでのビジネスモデルが崩壊してレコード会社やマネジメントオフィスの存在意義が薄れてきた現在において、ミュージシャン側も既存のエコシステムを使わないでライフスタイルを構築してゆかなくてはならなくなりました。
既存のビジネスでは生活が成り立たない故に近年の音楽はスポンサードされたものが主流になり、メッセージ性やアート性は減少してしまいました。
音楽の純粋科学的アプローチも衰退しSteve Reichのミニマルミュージックのような発明品のような音楽も多くはありません。
音楽ビジネスモデルの激変が音楽文化そのものに暗い影を落としている現代において、自由な作風や音楽的実験を重ねる為には既存のビジネスモデルではない生き方を確立することがキーではないでしょうか。
そのひとつが「ワーキング・ミュージシャン」という生き方かと思います。
以下に以前書いた記事を掲載したいと思います!





ワーキング・ミュージシャンとは新しいプロの形で、他の仕事を持ちながらもプロ・ミュージシャンとして活動する生き方をいいます。
企業での仕事が本職で、音楽は趣味という極端な考え方ではなく、そのどちらもが自分にとって本職であり、ダブルワークをしているという考え方です。
この考え方はオランダのギター制作家Phil Nealさんが提唱しています。

プロ・ギタリストには突然にはなれません。
キャリアを重ねてだんだんとなってゆくものです。
プロになるまでの数年間は生きるために他の仕事もしなくてはなりません。
大事なのはその間、どちらの仕事も真剣にプロとして取り組み、どちらも自分にとっての本職と考えることです。
そうしたダブルワークの生活の中でたまたま音楽仕事の比率が増えればそちらに軸足を移せば良いのです。

また音楽の仕事が増えなくてももうひとつの本職で生きてゆけるなら音楽もやめる必要はありません。
どちらも自分にとってのかけがえのないライフ・ワークです。
「本業vs副業」「仕事vs趣味」「正規雇用vs非正規雇用」などといった本質を欠いた二元論で人生を捉えてはいけません。
大事なのは何事にも真剣に向き合う真摯な姿勢と、それを貫ける健康な心なのです。

たくさんの人々がこの二元論にとらわれて議論してきますが、取り合わずに自分にとって音楽も仕事も本職であり、ダブルワークであり、そんな自分はワーキング・ミュージシャンという存在だ、プロ・ミュージシャンなのだと宣言することです。
そして本当はプロやアマといった考え方も音楽のクオリティや人生にとって何の意味もないことだと気づき、自分らしい人生を音楽と共に歩んでほしいと思います。

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